ジクアスLX点眼液3%のメーカー自主回収(クラスⅡ)について:頻用されるドライアイの目薬です 

患者の皆様へ

 2024年5月21日、参天製薬が製造販売のドライアイに治療薬であるジクアスLX点眼液3%の防腐剤成分の濃度に、不具合のあるものが確認、メーカーから自主回収(クラスⅡ)が出ました。去年に製造されたものの一部です。
 それに伴い5月22日より原因究明のため、出荷停止となってしまい、全国的にジクアスLXが当面の間、処方でなくなりました。当院では当面の間、ジクアス点眼液3%(LXではなく、旧ジクアス)あるいはその後発品、または別の点眼での対応とさせて頂きます。ご迷惑をおかけしますが、宜しくお願いいたします。
なお、ドライアイの病気説明についてはこちらをご覧ください

当院のドライアイのサイト】
【ジクアスLX自主回収に伴う当院の代替的なドライアイ治療】

ジクアスLXにおいては、当院でも多数の患者様に処方しておりますが、結論から申し上げますと、効果や副作用についてはまず影響なく、実際は大きな心配はされなくても大丈夫と、メーカーも眼科医の私も考えております。

①自主回収(クラスⅡ)とは

 メーカー等がお薬や医療機器の不具合に気づくと、そのメーカーが各医療機関に知らせた上、「自主的」に製品を回収します。不具合の程度により、下記に分類されます。今回、ジクアスLX点眼液の場合、クラスⅡですので、まず重篤な健康被害はないと考えられます。

自主回収のクラス分類について

クラス分類とは、回収される製品によりもたらされる健康への危険度の程度により、以下のとおり個別回収ごとに、I、II又はIIIの数字が割り当てられるものです。

  • クラスI:クラスIとは、その製品の使用等が、重篤な健康被害又は死亡の原因となりうる状況をいう。

  • クラスII:クラスIIとは、その製品の使用等が、一時的な若しくは医学的に治癒可能な健康被害の原因となる可能性があるか又は重篤な健康被害のおそれはまず考えられない状況をいう。
  • クラスIII:クラスIIIとは、その製品の使用等が、健康被害の原因となるとはまず考えられない状況をいう。

  • 以下、厚生労働省のHPです。詳しくお調べになりたい方は、下記をご参照ください。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/kaisyu/index.html

    ②今回の回収理由について

     ジクアスLX点眼液には、コンタクトレンズ装用したままでも点眼を禁止されていない、優しい防腐剤が含有されております。その中に、硝酸銀が含有されていて、メーカーが点検したところ、銀の濃度の薄いものが見つかったとのことです。故に、点眼液を開封した後の点眼防腐効力の低下が懸念されるとのことでした。

     ただし、製造する承認前に国から承認得た基準には満たないものがある可能性があるものの、実際は防腐能力をもつ基準は満たしており、安全性への影響は少ないと考えられるとのことでした。

     なお、該当ロットの製品が出荷されたのは2023年3月~2023年12月の間とのことですが、2024年5月22日現在、原因究明のため、消費期限内の製品は全品自主回収となっています。

    ③当方の私見(2024年5月22日現在)

    あくまでも、当方の私見ですが、上記ですので、まず実際に使う分には問題ないと思います。

     まず、去年これだけ長期間、当院だけでなく全国各地の多数の患者様に処方されていて、重篤な副作用の報告は上がってきていないようです。

     次にジクアスLX点眼液を含め、ほとんどの目薬は開封後、4週間常温保存に耐えられるように設計されています。


     一方、ジクアスLX点眼液は通常1日3回 ほとんどの方は両目に点眼するように処方されます。まじめに点眼していれば、計算上約20日で使い切る設計になっております。即ち、開封後の想定の消費期限が来る前になくなります。

     最後に、国の承認基準に満たないものの、実際は防腐剤として機能する濃度も満たしているとのことです。開封後の1本あたりの点眼使用期間も短いですし、日本の衛生環境を考えると、ほとんどの方には問題ないと私は考えます。

    ④想定される医療機関や患者様の対応

     結論からお伝えすると、一度、患者の皆様の手に渡ったお薬は、(自主回収 クラスⅡ)の程度では、返品・交換の対象となりません。あくまで医療機関(クリニック、薬局等)の在庫として眠っているお薬は、自主回収・返品の対象になります。以前に同じようなケースもあり、兵庫県保険医協会にも確認しました。

     あくまで、国が命令しているわけではなく、メーカーの自主回収だからです。厚生労働省の認可した製造過程ではないけど、お薬としては効能を発揮しており、健康被害は出ていないし、出る可能性がほぼないからです。

     患者のみなさんは、医療機関や薬局にお薬を返品・交換してもらうことの法的権利を有さないとのことです。それ以上の対応は各医療機関の善意による対応となると思います。もし、ご心配な方は、お薬を受け取ったクリニックや薬局にお問い合わせてみるといいでしょう。何らかの対応があるかもしれません。

    正直、院長の私としても、しっくりこない対応だと思っていますが、現在の制度上、そういうことになるようです。

    ⑤ジクアスLXの代替治療のまとめ

    2024年5月27日にUPいたしました。さらにご興味のある方はこちらをご覧ください。
    【ジクアスLX自主回収に伴う当院の代替的なドライアイ治療】

    これは2024年6月11日 午前8時半時点の情報です。また、最新の情報はメーカーのHP等よりご確認ください。
       参天製薬のHP https://www.santen.com/jp

                              

    最後に

    ジクアスLXに健康被害がなかったとはいえ、連鎖的に他の薬剤も不足しております。調度、診療報酬改定でお薬の値段が大幅に下がるタイミングもあり、ほとんどの医療機関でお薬の在庫量を減らしていた悪いタイミングも影響していたと思います。1日も早い原因究明と製造ラインの回復を切に願っております。

    芦屋川眼科院長 橘 理人

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