緑内障

緑内障とは

「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」(日本緑内障学会ガイドライン)と定義されます。

緑内障は、視神経の形(乳頭形状)と機能(視野)の特徴的な変化から診断され、眼圧を下げる治療によりが進行を遅らせることができます。

眼底カメラ(正常なものと緑内障、視神経乳頭陥凹拡大)

人間ドックでは視神経乳頭陥凹拡大、緑内障の疑いと記載

症状

★視野のイメージです。進行するに従い見える範囲が狭くなります。

緩徐に進むタイプ

緑内障の自覚症状としては、見えない場所(暗点)が出現する、あるいは見える範囲(視野)が狭くなる症状が最も一般的です。しかし、日常生活では両眼で見ているため、多くの場合病気の進行は緩やかなので、初期は視野障害があってもまったく自覚しないことがほとんどです。

急に進むタイプ

急激に眼圧が著しく上昇した場合(急性緑内障発作)は、眼痛・充血・目のかすみのほか、頭痛や吐き気を自覚することもあります。

原因

眼圧と防水

眼圧は「房水」という目の中を循環する液体の産生と排出のバランスによって決まります。

毛様体という組織で作られて、虹彩の裏を通過して前房に至り、線維柱帯を経てシュレム管から排出され、眼外の血管へ流れていくという定まった経路で循環しています。この房水の循環によって、ほぼ一定の圧力が眼内に発生し眼球の形状が保たれます。この圧力のことを「眼圧」と呼びます。つまり、眼圧とは、眼の硬さであるといえます。

緑内障のタイプと原因

隅角の形により大きく2つにわけられます。

原発開放隅角緑内障

線維柱帯(とその奥にあるシュレム管)と呼ばれる場所が目詰まりを起こし、うまく房水が流出されないために眼圧が上昇すると考えられています。

原発とは、「誘因となるほかの病気がないにもかかわらず」という意味を表します。

隅角とは、線維柱帯を含めての房水の流出路の場所で、角膜と虹彩の間のことを指します。

この病名は、原発とは「ほかの病気のためではなく」、開放隅角とは「隅角が見かけ上開放されているのに」を左枝、視神経が障害される緑内障です。

★眼圧が正常でも、緑内障は起こりえます。

正常眼圧緑内障:眼圧にありながら視神経が障害されるタイプの緑内障です。視神経の血液循環が悪かったり、遺伝や免疫、酸化ストレスなどの様々な原因のために、通常では緑内障を起こさない程度の眼圧でも視神経が障害されるのではないかと考えられています。

罹患してしまうリスクの高いのは、高齢者、強度の近視と言われています。

原発閉塞隅角緑内障

「ほかの病気のためではなく(原発)」、「隅角が狭くなり(狭隅角)ついには閉じてしまう(閉塞してしまう)ために」、房水の流出が障害され眼圧が上昇する緑内障であることを意味します。

★急性緑内障発作

原発閉塞隅角緑内障では、急速に隅角が閉じてしまうことで、劇的で著しい眼圧上昇を来すことがあり、これを一般に急性緑内障発作と呼びます。

眼痛、頭痛、吐き気などの激しい自覚症状が出現します。

検査

眼圧検査、隅角検査眼底検査、光干渉断層計、視野検査を行い、病状の評価や進行経過を確認します。

眼圧検査

ノンコンタクト・トノメーター

検査員が黒目に風を当てる検査です。

アプラネーション・トノメーター

目薬麻酔をしてから、医師が診察室でチップを角膜に当てて測定する検査です。上記より正確に測定できます。

隅角検査

診察室で医師が目薬麻酔をしてから、直接目に鏡を当てて、隅角(目の水の排水溝)の様子を観察する検査です。

眼底画像検査:眼底検査、眼底カメラ、光干渉断層計(OCT)

眼底検査

医師が部屋の電気を暗くして、虫眼鏡と光を当てて、直接の中を観察します。

眼底カメラ

検査員が暗室で眼底写真(目の奥の写真)をとります。

光干渉断層計(OCT 眼底3次元画像解析)

眼底カメラと同医装置で緑内障にともない網膜も薄くなるので、その様子も同時に観察できます。

視野検査

見える範囲を観察する検査です。

患者様にドーム状の箱に頭をいれていただき、「ピカ」っと光ったら、ボタンをおしていただく検査です。

治療

緑内障の治療は眼圧を下げることです。ひとたび障害されてしまった視神経は、残念ながら回復することはありません。また、どんなに手を尽くしても進行を止められない緑内障もあります。治療の目的は進行を止める、または遅らせることであり、回復させるものではありません。治療方法としては、薬物療法・レーザー治療・手術があります。

薬物療法

多くの緑内障では、まず薬物療法が治療の基本となります。現在では、さまざまな薬効を持った点眼薬が発売されており、緑内障のタイプ・重症度・眼圧の高さなどに応じて処方されます。一種類の目薬だけで効果が少ないと判断された場合は、複数の目薬を組み合わせて処方されます。点眼は1回に1滴、複数のときは5分以上空けてさすことが、なるべく副作用を少なくして、確実に効果を得る点眼方法です。また、眼圧を下げる飲み薬もありますが、全身の副作用が強く出ることがあり、内服できない場合もあります。目薬は病状を維持するためのものです。症状が改善しないからといってやめてしまわず、長期的に根気よく続けていくことが重要です。

レーザー治療

当院では施行しておりませんが、必要になる場合は対応施設へご紹介します。

レーザー治療には主に二つの方法があります。

虹彩(いわゆる茶目)に孔を開けて、眼内の房水の流れを変える手術

多くの閉塞隅角緑内障がこの方法によって治療可能です。虹彩に孔を開けるときにレーザーを使用します。

線維柱帯に照射することで房水の排出を促進するためのレーザー治療

一部の開放隅角緑内障に効果があります。レーザー治療の痛みは極軽度で外来で行うことができます。

本格的な手術

薬物療法やレーザー治療が功を奏さなかった場合に行われる治療です。

房水を眼外に染み出すようにバイパスを作る手術

排水溝を広げる手術

線維柱帯を切開して房水の排出をたやすくしてやる手術の二つがあります。また、房水の排出を改善するために留置する器具も開発されています。これらの手術方法は症例に応じて選択されます。

★手術をしても症状が改善するのではなく、あくまで眼圧を下げて進行を食い止めるのが目的です。緑内障の手術方法は年々改良が進み、治療成績もかなり改善されてきましたが、合併症もありえますし、術後に再手術が必要となる可能性もあります。またうまく眼圧が下がっても定期的な管理が必要です。

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