ジクアスLXメーカー自主回収に伴う当院の代替的なドライアイ治療

患者の皆様へ

 2024年5月21日、参天製薬が製造販売のドライアイに治療薬であるジクアスLX点眼液3%(※)の防腐剤成分の濃度に、不具合のあるものが確認され、メーカーが自主回収(クラスⅡ)を施行しております。それに伴い全国的に当面の間、医療機関で上記の製剤を事実上処方できなくなりました。

 当院でもそれに伴い、下記の代替案を提案させていただいております。

  • 【当院での代替案
  • ①ジクアス点眼液3%およびジクアホスルNa点眼液3%
  • ②ムコスタ点眼液およびレパミピド点眼液
  • ③ヒアルロン酸0.1%または0.3%(ヒアルロン酸ナトリウム)
  • ④人工涙液マイティア点眼液
  • ⑤低濃度ステイロイド点眼液
  • ⑥ヒアレインS(保険外:要指導薬品:薬剤師が薬局で販売するもの)
  • ⑦市販の人工涙液(ソフトサンティアなど ドラックストアでも購入可)
  • ※上記を組み合わせることもあります。
  • 下記はそれぞれについて詳しく説明していきます。


一方、日本中で代替処方が行われるため、順次、連鎖的に他のドライアイの治療薬も供給不足が懸念されます。患者様におかれまして、眼科等で処方せんをもらったあとは、薬局へお薬をもらいに行く前に、当該の薬局の一度在庫状況や入荷の見込みの電話をしてみた方がよいでしょう。

  • ※ジクアス(ジクアホスナトリウム)点眼液の効果
  • 結膜に作用して涙の成分であるムチンや水分の分泌を促進し、涙の状態を改善することにより、涙の質や量を増やして目の表面の環境を改善し、異物感を軽減させます

【ドライアイとは】

【ジクアス自主回収についての詳細はこちらのページを】

①旧ジクアス点眼液3%とジクアホスルNa点眼液3%(ジクアスの後発品)

 発売当初のジクアス点眼で6回点眼する必要があります(※)。製造販売もとの参天製薬によると、こちらは製造ラインが異なるので、今のところ、不具合の報告はないとのことでした。
 ただ、ジクアスLXが供給不足になったので、こちらに処方の切り替えの方が多くなっていると聞いております。参天製薬さんや後発品メーカーの日東メディックさんも増産をしているものの、ジクアスLXの不足分を急に補うだけの余力がないのが現実のようです。2024年5月27日現在、薬局によっては、入荷の見込みがたたないことも多くなってきています。

※ジクアスLXとジクアス点眼液の違い
ジクアスLXは溶剤を改善することで、1日3回点眼でも同じ効果を発揮することができました。現在、ジクアスLXの方が楽なので、そちらの好む方が多くなっているとのことです。コンタクトレンズが渇き易い方は、コンタクトレンズを潤すため、あえて6回点眼を好む方もおられます。


②ムコスタ点眼液およびレパミピド点眼液

 

いずれもドライアイ治療薬です。左がムコスタ点眼液、右がその後発品(レパミピド点眼液)です。ジクアスとは少し作用機序が違いますが、おおむね、効果については同じようなものだと考えていただいたら良いと思います。


 

ただし、下記のような欠点があります。

(あ)コンタクトレンズ装用時にはやや不向き

写真をご覧のとおり、いずれの点眼液も白く濁っています。いずれの点眼液もコンタクトレンズ装用時の点眼には禁止されてはいないものの、お薬がコンタクトレンズに付着したり、コンタクトレンズと目の間に回ってしまったりして、見えにくくなることがあります。1日4回を基本ですが、上記の理由でコンタクトレンズを装用している方は、昼とか夕方の点眼の際は注意が必要です。

(い)苦味を感じやすい

 目薬は当然目に点眼するものですが、時間とともに涙と一緒になって、目薬の成分が目頭の涙点から鼻へ抜けてゆき、口に中へ入ります。もともと苦い成分がはいっています。

(う)先発品のコストが高い

ムコスタ点眼液は写真のとおり、1本1本が丁寧に個包装されております。1本が両目1回ずつ分です。その分だけ、ジクアスやムコスタの後発品より値段が高くなります。

③ヒアレイン点眼液0.1%及び0.3%(後発品のヒアルロン酸ナトリウム点眼液0.1%/0.3%)

 目の表面の涙の代わりや涙の保水を補助し、目の表面の傷の治癒を促進する作用もあります。ただし、ジクアスのように、目の表面の粘液の分泌を促すなど、根本的な目の表面の環境を改善する作用はありません。なお、通常は0.1%製剤を投与し、重症疾患等で効果不十分の場合には、0.3%製剤を投与します。
 
 ただ、2024年6月11日現在、現在ジクアスLXの製造中止に始まり、連鎖的にジクアス、ヒアレイン、ヒアルロン酸の処方薬が手に入りにくい状態になっている地域もございます。メーカーも急には増産できないため、入荷の見込みも経たない様子です。どうしても必要な場合、薬剤師さんと相談の上、⑥のヒアレインS(要指導薬品)の購入もご検討されるのも一つの手だとおもいます。

④人工涙液マイティア

 簡潔にまとめると、涙の成分に近い薄い食塩水です。防腐剤含有のため、開封後、約4週間は持ちます。ジクアスやヒアルロン酸に比べて、症状を緩和する効果は薄いです。

⑤低濃度ステロイド点眼液

ステロイドはもともと体内にある物質で、炎症を抑える薬です。ドライアイの原因として、目の表面の炎症も関わっていることがわかってきています。

本来であれば、ジクアスなどの点眼などで保水・保湿で症状が軽減して、間接的に炎症が軽快していた状態が、ジクアス等ドライアイのお薬が入手できないことより悪化してしまうことがあります。ドライアイの原因として、炎症が強く関わっていると考えられる場合、必要になることもあります。

ただし、低濃度であれば安価で安全性も高いものの、長期間に渡り点眼すると、個々の患者の体質により、眼圧上昇し緑内障【※】になりやすくなったり、目の表面の免疫力が低下するケースもあります。慎重に使用する場合、眼科専門医のもとでの慎重な処方と経過観察が必要です。【緑内障のHPはこちらへ】

日本では重症なドライアイに用いられることが多いですが、アメリカなどの海外では主要なドライアイのお薬として使用されています。なお、コンタクトレンズ装用しながらの点眼は禁止されています。

ただ、こちらの薬剤も某眼科点眼メーカーでの材料調達問題の影響により、全国的に供給が不安定になっております。

⑥ヒアレインS((健康保険対象外:要指導薬品:)

処方薬のヒアレイン点眼液0.1%(③)とほぼ同じものです。カラーレンズ以外のコンタクトレンズの上から点眼できます。

【参天製薬のHP】

今後、連鎖的に処方薬のヒアルロン酸ナトリウム点眼液の供給も不足してくる可能性があり、薬局からすぐに手元にお薬がもらえない可能性も出てくることもあります。本来はもちろん処方薬を点眼するのがベストです。しかし、すぐ手に入らず場合、取りあえずこちらを購入して、処方薬を入手できるまで待つのも一つの手だと思います。処方薬が手に入りにくい場合は、主治医や担当の薬剤師の先生にご相談ください。

 注意点として、このお薬は要指導薬品(※)となっております。まず、来店予定の調剤薬局にこの製品の在庫の有無、薬剤師がおられる時間帯を確認してください。薬剤師の先生がおられないと購入ができないですので、事前にお電話されてから来店される方が良いと思います。

※要指導薬品

販売に際して、薬剤師が需要者の提供する情報を聞くとともに、対面で書面にて当該医薬品に関する説明を行うことが義務付けられています。
そのため、インターネット等での販売はできません。店舗においても、生活者が薬剤師の説明を聞かずに購入することがないよう、すぐには手の届かない場所に陳列などすることとされています。

厚生労働省のHP

⑦市販の人工涙液(健康保険対象外)

ドラックストア等で気軽に購入できます。上記④と同じ涙に近い薄い食塩水です。各メーカーで多種多様なものが出ております。

 注意点として、まずコンタクトレンズの上から装用できるものと、できないものがあります。次に、使用頻度と開封後の消費期限に注意をしてください。

強い防腐剤が入っているものは長期間持ちます。逆に、優しい防腐剤が入っているものは、コンタクトレンズの上から点眼できる製剤が多いですが、開封後の期限が短いです。

一本一本が個包装になっているものは、1本で1回両目1滴ずつ点眼するように設計されており、防腐剤も優しく消費期限が長い製剤が多いです。一般的にコストがやや高いです。

それぞれの方が1日あたりに必要な回数に応じて、購入を検討してください。

なお、一般的な目薬の設計は1本5mlになっており、1日4回両目に1回1滴点眼すると、約2週間でボトルは空になります。ボトルが標準より大きいものもあります。

使用期限の過ぎた目薬は、ただの薄い塩水です。これから暖かくなる中、管理には特に気をつけねばなりません。

どの人工涙液を購入したらいいかわからない場合、詳しくはその薬局の薬剤師や登録販売者にご相談ください。

【最後に】

上記は2024年6月11日時点での情報です。

また、最新の情報は各社のHPや主治医、薬剤師のご確認ください。

1日も早い安定供給を切に願っております。

芦屋川眼科 院長 橘 理人

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